かずさ地域で受け継がれている
「疫病・災いを除ける風習」
 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため2度目の緊急事態宣言が発出され、その対策として様々な行動の自粛が要請されています。不自由・不安な日々が続く中、誰もが一日でも早く新型コロナウイルス感染症が収束することを願っていると思います。
 長らく疫病は、自然災害と同様に、神や怨霊によってもたらされると考えられてきました。こうした災厄を避けるための様々な信仰や行事が、かずさ各地で受け継がれています。
 コロナ禍の今、地域の風習にあらためて目を向けてみてはいかがでしょうか。

★お出かけの際は感染予防のため「新しい旅のエチケット」を守り、地元の方の迷惑にならないよう気を付けて下さい。
 しめ張り(坂田)・綱より(香木原)
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 金田のつなはり(木更津)
  木更津市の金田地域では「つなはり」という行事が行われています。これは自分たちの地域に災いや厄病が入らないように祈願した、境界の神信仰の風習を今に伝える行事です。
 中島地区では入口と出口に人形・エビ・タコ・サイコロなどを吊るした綱をはり、天下泰平・家内安全・浜大漁や五穀豊穣を記した木札を下げて、厄神防除を祈ります。
 綱に吊るされているものには次のような意味があると考えられています。

○綱は蛇の信仰の由来で、蛇は稲作の大敵であるネズミやカエルを食べる
○人形は人の身代わりであり、そこに住む人の身代わりとなって災害や災難を引き受けてくれる
○エビは病気を跳ね返し、海の龍や翁と言われ、長寿を託す
○タコは口で悪い病気を吸い出し、足が8本の末広がりで縁起が良い
○サイコロは船が迷わないで難破しないように2個作り、船の心臓部に安置する
○たわしは身に降りかかってくる邪悪な鬼や疫病、怪我などを洗い落とす
○杉の葉は悪いことが早く「過ぎ」るように
○絵馬・駒・お札は願い事や幸運と安全の祈願のため

 金田地域では1月に綱が張られ、自然に朽ち果てるまでの間、見ることができます。
場所 木更津市金田地区
〈問合せ〉
TEL0438(97)6292
木更津市金田地域交流センター
 関尻の大わらじ(富津)
 「私の村では、厄病は済み(木炭)ました。疫病は過ぎ(杉)ました。この村には、こんな大きなわらじをはく大男が居る。これを見た疫病神は村の入口から引き返していくだろうから、お酒でもてなし、新しいわらじを履いて帰っていただこう。」 という人々の願いがこめられたものです。
  富津市南部の峰上地区には、「でぇでっぽ」と呼ばれる大女が落としていった臼とされる「姥石(うばいし)」や、巨人の足跡と呼ばれている所など、巨人伝説にまつわる場所が多い地区です。
 関尻の地区境3カ所には、大わらじがぶら下がっており、このわらじは長さ150p、幅60pの片方のみで、同じワラで編んだ酒樽と木炭と杉の小枝が添えられています。
毎年2月の第1日曜日に地区のお堂で、新しいわらじが作られ、古いものと取り替える「綱吊り(つなつり)」が行われています。
場所 富津市関尻県道182号沿い他
〈問合せ〉
TEL0439(80)1291
     富津市観光協会
 きみぴょん×かしま人形 〜疫病をよけるおまじない〜(君津)
 君津市役所の1階ロビーに「鹿島人形」の着衣を付けた「きみぴょん」のぬいぐるみが飾られています。
 これは久留里城址資料館で昨年開催された企画展「疫病ときみつの信仰〜道切りを中心に〜」にちなんだもので、大型の「鹿島人形」は、疫病や災いを除ける共同祈願のまじないで、千葉県では君津市を中心に伝えられています。
 君津市域の鹿島人形は、等身大で手を大きく広げ、刀や槍を携えた鹿島神(武神)の姿で、悪霊・疫病・悪い物事などを退散させると伝えています。毎年9月から10月に作られ、集落の神社か、ムラ境に立てられます。 地域によって「鹿島様」や「人形だんご」と呼ばれ、呼称のように、だんごや菓子を人形に乗せたり、詰めたりして、それを食べると病気にかからないとされています。
 地域の方々が協力して作り、伝えてきた「鹿島人形」は、疫病を恐れ、苦しんできた長い時代の切実な思いが込められた、きみつの祈りの形です。「きみぴょん」に着付けて、新型コロナウイルス感染症の収束を願っています。
期間 3月31日(水)まで(土・日曜・祝日、年末年始は閉庁)
時間 8時30分〜17時15分
会場 君津市役所1階 ロビー南側(君津市久保2‐13‐1)
〈問合せ〉
TEL0439(27)3478
    久留里城址資料館